他の家族が異常に接近したとき、別のオスが巣やメスに近づいた場合などに、あらかじめ交わす挨拶(あいさつ)や威嚇(いかく)の合図を無視してさらに近づくと、相手を嘴(くちばし)で噛(か)んだり翼で打ちつけたりします。よほどのことがない限り、致命的な傷を与えるにはいたりません。
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★★ 解説 ★★
39の解説で、オオヒシクイがよく鳴き交わす賑やかな鳥である理由を説明しました。家族やつがい同士で頻繁(ひんぱん)に意思を確認するのと同時に、別の家族や他の個体の間でも声や姿によるコミュニケーションが行われています。
たとえば、二つの家族が左右から歩いてきて、あるところで鉢合(はちあ)わせになったとします。最初は家族同士で挨拶(あいさつ)をかわしますが、どちらも道を譲(ゆず)らずに距離が縮まると、次第に威嚇(いかく)の姿勢をとるようになります。首を地面と平行にすれすれまで下げ、頭はしゃくり上げるようにやや上向きです。舌を出しながら口を大きく開けます。たいてい先頭にたってこのようなポーズをとるのはオス親です。後ろでは幼鳥も同じような格好をまねて応援に入ります。ほとんどの場合この時点で決着がつき、家族の少ない方が道をあけます。こうした儀式化された一連の行動は、実力行使を避け無駄な争い事をなくすのに役立っています。しかし、威嚇(いかく)の姿勢をとったにもかかわらず引き続き接近するものがあれば、実力行使に移ります。噛(か)み付き・肘(ひじ)打ち・飛び蹴りなどいくつかの攻撃方法があります。姿勢を低くし、首をすぼめて降参のポーズを示すと、それ以上争いがエスカレートすることなく終わります。優位に立ったオスは「勝利」を誇示するかのように胸を張り、羽を広げて家族のもとへ急いで戻ってきます。
力の優劣がハッキリしたらできるだけ早く終息させるための約束事があるので、喧嘩(けんか)に発展しても相手を殺すような事態にはまず至りません。
事を荒立てずにすませるには普段からの意思疎通(いしそつう)が一番大切で、ガンは様々な儀式と約束によって平和的に暮らしています。
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