家族間でお互いの存在や安全を確認しながら飛んでいるためです。鳴き声が全く聞こえないときもありますが、それは当面の間、進路やスピードを変えずに飛んでいっても差し支えない場合です。また、普段の賑(にぎ)やかな声だけでなく、もう少し小さな声で鳴きあっている時もあります。
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★★ 解説 ★★
ガンをはじめハクチョウやツルなど、大型で家族そろって長距離を移動する鳥は、たいてい綺麗(きれい)な列をなして群れで移動します。負担を分担したり、家族がばらばらにならないよう、お互いの存在や周囲の安全を確かめたりしています。四足の動物の場合には、親が子どもを直接抱えて運んだり、手をつないで移動することも可能ですが、鳥の場合は手に相当する翼で羽ばたくので、つないだまま移動はできません。その代わりの役目を果たしているのが鳴き声です。
もしある特定の一羽の鳥がリーダーとして群れを率(ひき)いているのなら、その鳥だけが命令や支持を出し、あとの鳥は黙ってそれに従えば用は足ります。しかし、家族が基本の単位となって意思や存在を確認しながら飛ぶのですから、一方通行では合意が成り立ちません。A→B・B→A双方向のやり取りがあってはじめて意思の疎通(そつう)がはかれます。二羽のつがいだけなら少なくて済む回数も、幼鳥の数が多いとその分やり取りも増えます。ガンがおしゃべりな鳥だと言われるのは、家族が常に行動を共にし、全員の意思の一致を基本的な行動の原理としているからです。
黙っていても家族はついてくるものとされ、口数の少ない頑固親父(がんこおやじ)がかつていました。「言わなくても分かるはずだ」と。しかし今ではかなりまれな存在で、全体の調和を図れない親は失格者の烙印(らくいん)を押されてしまいます。戦前は良かったというお父さん、昔のままの考えでは日本の社会は衰退(すいたい)の一途をたどるばかりです。
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