全体では約2万本の羽が生えています。代表的な羽である翼の先端の「初列風切羽」は、右と左に10枚ずつあり、体の軸を中心に左右対照に生えています。
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★★ 解説 ★★
33の解説で説明したように、羽には様々な機能や効果があり、それに応じて構造の異なる羽が体の各部分にあります。普通に羽と呼んでいるのは、翼や尾・体の表面に分布するものを指し、「正羽」といいます。ストローのように長く、中が空になっている軸をもち、その両側に櫛の歯に似た「羽弁」が並んでいるのが特徴です。
もっともバラエティ豊な「正羽」が生えているのが翼です。「風切羽」は外側10枚を「初列風切羽」、その内側の13枚を「次列風切羽」、一番体に近いほうを「三列風切羽」といいます。「初列風切羽」では羽軸が中央から外側に片寄り、外側の「羽弁」に緩いカーブを描いた切れ込み(ノッチ)があります。飛行中前に進む力を生み出しています。「次列風切羽」は、羽の形はほぼ同じで先端が丸みを帯びています。浮き上がる力を発生させるのが主な役目です。
「正羽」の下には「綿羽」が皮膚を広くおおっています。読んで字の通り、綿のように柔らかく、フワフワした羽です。この羽が皮膚の表面に隙間(すきま)なく生え、空気を含んで厚い層を作り出しています。さらにこの空気の層の表面に尾脂腺からとった脂を薄く塗りつけることで、水が中に染み込んでいくのを防ぎます。空気が脂の膜に包まれた状態、つまり浮き袋と同じ仕組みが出来上がります。この「綿羽」の働きにより、ガンは人間よりも高いおよそ41度の体温を保ったままで、水の上に浮いていられるのです。
一番生えている羽の少ないのは「ハチドリ」の仲間で100本以下だそうです。また、体のあらゆる部分から羽が生え出ているのではなく、体の表面の60%ぐらいしか生えていない種もいるそうです。だからといって外見上は「ハゲ」がある訳ではなく、羽がねているので全身にあるように見えます。一番羽が密に生えているのはハクチョウやカモ・ガンなどで、その名の通り北極圏で繁殖(はんしょく)する「ケワタガモ」は綿羽(ダウン)の量・質の良さで知られています。
体の羽は一年かけて少しずつ生え変わります。初列風切羽は一度に抜けます。いったん伸びた羽は、体とは物質のやり取りがなくなります。この仕組みを利用して、ガンは毒となる鉛などの重金属を血液を通して羽に送り込み、体内から排出(はいしゅつ)しています。
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