オオヒシクイの脚(あし)の血管には、しもやけにはならない仕組みが備わっています。日本で普通に越冬している限りでは、しもやけにはならないと思われます。
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★★ 解説 ★★ ペットボトルに水を入れて冷凍庫にしまうとどうなりますか?中の水は凍ってしまい、しかも体積が増すのでペットボトルは壊れてしまいます。中の水が体の細胞の体液、ペットボトルが細胞の膜(壁)だと考えてください。
「しもやけ」とは、手や足・耳や鼻などの先端部分に起きる部分的な「凍傷」のことです。「凍傷」との違いは、「しもやけ」は気温五℃前後でできやすい点です。長時間低温にさらされると、やがて体液が凍って細胞組織が破壊(はかい)され、機能しなくなります。また、血液の循環(じゅんかん)も止まります。体の先端部分を犠牲(ぎせい)にして、冷たい血液が体の中心部に戻るのを防ぎ、体温の低下を少しでも防ごうとします。血液が来なくなると、細胞の膜を通して酸素や必要な養分をおぎなえなくなる上、不要な老廃物(ろうはいぶつ)を運び去ることもできなくなります。こうして障害が進行し続けると、ついには組織が「壊死(えし)」して、指などは落ちてしまいます。
オオヒシクイなどガンがしもやけになりにくいのは、二つの血管、動脈と静脈が平行して走っていて、先の細い方では動脈の外側を静脈が取り囲むように絡(から)まっているからです。この仕組みにより、体の中心部から来た暖かい血液は、脚から帰って来た冷たい血液と熱のやり取りしています。脚から来た静脈血は、動脈によって徐々に温められますから、冷たいままで体に戻ることはありません。熱交換により、不要な体温の低下を最小限に抑えることができます。
南の方で生まれ育ったペリカンには、このような仕組みはありませんので、寒いところで飼っているとしもやけになります。ガンはやはり中緯度より北の地域で暮らすのに適応した鳥といえます。
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