卵を産む時期になると、胸からお腹にかけての羽が抜けて地肌が現れます。その部分を卵に当て、体温を伝えて卵を温めます。抜けた羽(ダウン)は卵の間に敷き詰めて、クッションや保温材に用います。最後の卵を産んでから温め始めます。
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★★ 解説 ★★
ガンの体に生えている羽はとても優れた断熱材(だんねつざい)で、体温を41度前後に保つのに役立っています。特に北極圏で繁殖(はんしょく)するハクガンやコクガンの綿羽(ダウン)は保温性が高く、服や布団の中にいれる素材としてはもっとも適したものです。さて、保温性がいいというのは体温を逃がさない訳ですから、卵を温めるときはかえって邪魔(じゃま)になります。卵を産む頃になると、胸のあたりの羽(綿羽=ダウン)が抜け始めます。
最初の卵を産んだときは、巣は単なる窪みに過ぎず、卵がゴロンとむき出しのままです。2個、3個と産み足すごとに、ダウンや巣のまわりにある茎・葉などを卵の周りに詰め込み、最後の卵を産む頃には立派な巣が完成します。卵の形は四つ五つとくっ付けて並べたときに、透き間ができないように自然と工夫されたものに違いありません。また卵は、鋭端(えいたん)を内側にしたまま円を描いてもとの位置に戻る仕組みになっているので、巣から遠くに転がっていく心配も少ないと思われます。
ガン類のヒナは孵化(ふか)後数時間で巣を離れる「早成性」の鳥で、安全な場所へ早く移動するためにも、孵化(ふか)のタイミングが一致していなければなりません。ですから、最後の卵を産んでから温めはじめます。もし最初の卵を産んで温め出すと、ヒナは別々に孵化(ふか)します。これでは全員が揃って巣を去るのは無理です。反対に、フクロウは木のウロに卵を産み、ヒナは孵化(ふか)後親に餌を運んでもらう「晩成性」の鳥で、一番目の卵を産むと直ぐに卵を温めはじめます。
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