見た目は不恰好(ぶかっこう)ですが決して下手ではありません。また、とても速く走れます。
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★★ 解説 ★★
脚(あし)には水掻(みずか)きがついているうえに短く、体のやや後ろ側についているので、歩く姿は決して格好のいいものとはいえません。お尻を左右に振りながら、脚を少し外側に回すように出して前に進みます。軍隊のパレードでは、ひざを曲げないで脚を真っ直ぐにのばしたまま全員がそろって歩きますが、この歩調を英語で「Goose step」といいます。ガンの歩き方にどことなく似ているのでそう呼ばれます。また、歩くとき前に出す方の脚(あし)の水かきは、中央の指に沿ってすぼまります。その形が似ているので、シダ植物の一種である「クサソテツ」は別名を「ガンソク(雁足)」といいます。この新芽を「コゴミ」と称し、春の山菜として珍重(ちんちょう)します。ついでにもう一つ。「雁爪(がんづめ)」という農具があります。三、ないし四本の爪がある鉄製の道具で、イネ株の間の土を起こして雑草を取り除くのに使います。今ではほとんど見かけなくなりました。実際のガンの爪は、昔缶ジュースを飲むときに、二つの穴を開けるのに使った缶切りの先に似ています。ガンの脚に関係する言葉を幾つかならべてみました。それほどガンは昔から馴染(なじ)みの深い存在で、日常の生活のなかに溶け込んでいた証拠だと思います。
話をもどしますと、ガンは小学生が全力で駈けるより早く走れます。しかも50mを越える長い距離をそのスピードを保ったまま走ります。ガンが陸上競技に参加したら、人間はメダルを一つもとれないかもしれません。
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