満一歳です。実際に繁殖(はんしょく)を始めるのは、メスで二歳、オスで三歳くらいです。
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★★ 解説 ★★
ガン類のヒナの成鳥はとても早く、生まれてからおおよそ一月で大人と同じ大きさに育ちます。しかし、体の中の仕組み、特に繁殖(はんしょく)にかかわる器官が発達するには次の年の春まで待たなければなりません。それは単に年齢が若いからではなく、鳥類の生殖器官(せいしょくきかん)は季節ごとに大きく変化するからです。オスの生殖腺(精巣)は、繁殖(はんしょく)とそうでない時期とで比べると長さでは数倍も違います。空を飛んで移動する鳥にとって、使わない部分はできるだけ小さくしておき、必要な時期だけホルモンの働きによって大きくなり活動が盛んになるのです。
しかし、生理的に繁殖(はんしょく)が可能になることと、実際に繁殖(はんしょく)できるかどうかは別の問題です。まず、つがいの相手が見つかるかどうかが最初の関門です。そして運良く相手が決まっても、巣をかまえるのに安全な場所が確保できなかったり、経験が浅く、交尾がうまくできないことも考えられます。首輪をつけた若い鳥は、たいてい三歳の年に幼鳥を引き連れて日本に姿を現すので、最初の一、二年は独身か、つがいになっても繁殖(はんしょく)に加わらないで過ごすのだと思います。
いつ、どのようにつがい関係を結ぶかについては、まだ詳しく分かっていません。若鳥は最初の一年は親に連れられて、繁殖地(はんしょくち)と越冬地の間を往復します。親は繁殖(はんしょく)の時期を迎える前に、前年生まれの若鳥を自分のもとから追い払います。その後、若い鳥は自分達が生まれた場所に留まり、翼の羽が生え変わる時期になると、下流の安全な湖へと移動します。川では主に少数の兄弟で過ごしますが、湖に移ると繁殖(はんしょく)に失敗した鳥も混ざって大きな群れになります。この時に、若い鳥はつがい関係を結ぶのではないのかと考えられます。
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