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ホーム > 9. オオヒシクイはどこから来るのですか。前 - 次

 カムチャツカ半島の西海岸に広がる広大な湿地帯から渡って来ます。

カムチャツカ半島の湿地帯

★★ 解説 ★★
 オオヒシクイがどこから来るのか、それは長い間分かりませんでした。第一、1980年代の初めまで、日本に来るのはほとんどが小型のヒシクイで、オオヒシクイは少ないと信じられていたほどです。1979年に新潟市の鳥屋野潟で一羽のオオヒシクイの死体が回収されたのを切っ掛けに、野外でヒシクイとオオヒシクイを見分ける方法ができ上がり、以後さまざまな調査が行われました。その結果、日本ではヒシクイよりオオヒシクイの方が多く、ヒシクイは太平洋側(宮城県)に見られ、オオヒシクイは日本海側の新潟・石川・滋賀県で越冬することが明らかになりました。さらに、ガン類の専門家グループが新潟県豊栄市の福島潟でオオヒシクイを、宮城県内でヒシクイを捕まえて黄色い首輪標識をつけました。これは、それぞれが越冬地を離れたあと、どこへ渡って行くのかを調べるためです。首輪をつけたガンを追いかけたところ、日本での動きがおおよそ分かり、ヒシクイとオオヒシクイでは国内の移動のコースが異なる点も明らかになりました。しかし、それも北海道までです。
 一方、ロシアのカムチャツカ半島で鳥の研究をしているN.N.ゲラシモフ博士らも、1984年から半島西海岸の湖でヒシクイ・オオヒシクイに首輪をつけ、どこへ越冬に渡って行くのか調べ始めました。調査した湖の一つのズベズドカン湖では、日本製の黄色い首輪をつけたオオヒシクイが発見され、またそこで赤い首輪をつけたオオヒシクイが新潟県などで多数見つかり、ようやく日本のオオヒシクイはカムチャツカから来ることが証明されるようになったのです。
 ただし、この時点ではオオヒシクイの繁殖地(はんしょくち)は不明のままでした。つまり、オオヒシクイはカムチャツカ半島以外の場所、例えばロシアの大陸側で繁殖(はんしょく)し、翼の羽が抜けて飛べなくなる時期だけ、安全で食べる草の豊富なカムチャツカの湖に来ると信じられていました。その理由の一つに、カムチャツカ半島ではオオヒシクイの巣も卵もヒナも、誰一人として見た者がいなかったからです。実際にオオヒシクイがカムチャツカで繁殖(はんしょく)しているのが確かめられたのは1999年のことです。巣と卵は未だに見つかっていません。オオヒシクイは今なお謎(なぞ)の多いガンです。
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