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ホーム > 7. オオヒシクイは嘴(くちばし)の力が強いと聞きましたが、どのくらい強いのですか。前 - 次

 イネの茎やマコモの根を食い千切るくらいの力があります。人が噛(か)まれると、皮膚(ひふ)が切れたり、内出血するほど強い力です。

★★ 解説 ★★
 イネはとても繊維の丈夫な植物です。水田に生える雑草を、アイガモのヒナを使って取り除く方法が東南アジアでは昔から普及していましたが、もし植えたばかりのイネが他の草と同じ様に柔らかくて美味しかったら、この方法はうまくいかなかったはずです。
 実際にカマでイネを刈ってみると、イネの茎(くき)の強さが分かります。また、イナワラを使って昔はロープ(=縄)にしたり、米を入れる袋(=俵)を作りました。それほど丈夫なイネの茎(くき)を一株丸ごと横にくわえて、上と下の嘴(くちばし)で何回か前後させると、きれいに千切れてしまいます。また、硬いヒシの実の棘(とげ)を折って取り除いたり、乾燥したトウモロコシを嘴(くちばし)で何度かすり合わせると、細かな粒になって落ちるほどです。野生の生物には、食べるため、あるいは生きるために人が想像する以上の能力が備わっているのでしょう。
 もっとも、以上のことができるのは単に力が強いだけではなく、嘴(くちばし)の構造にも秘密があります。上下の嘴(くちばし)の内側には、ちょうど鉄ヤスリの目に似た鋭いギザギザが並んでいて、目の頂点は喉(のど)の方(内側)を向いています。この突起は舌にもついていて、根や茎(くき)を千切ったり、穂から種子をしごき取ったり、種子を石臼(いしうす)のように挽(ひ)いたり、あるいは、くわえたものを奥へ送り込むのにも役だっていると考えられます。また、嘴(くちばし)の端には「嘴爪(はしづめ)」と呼ばれる部分があります。上から見ると18×21mmほどの楕円形で、貝殻を伏せたような格好です。しかし、横から見ると先がとても鋭いのが分かります。ここで小さなものをつまみ上げたり、引きちぎったりします。力がこうした突起状の一点に集まると、さらに大きな力となって威力を発揮します。ちょうど、サンダルで足を踏まれてもたいして痛くないのに対し、ハイヒールのかかとだと相当痛いのと同じです。
 余談ですが、捕獲して調査するときは、オオヒシクイの嘴(くちばし)と足の爪に注意しないと非常に危険です。爪で引っかかれると皮膚(ひふ)は見事に切れますし、服の上から肌をくわえたまま首を左右に振られると、内出血するほどです。肌がむき出しならば、皮膚(ひふ)は肉片ごと持っていかれたかもしれません。
 調査のときは、厚手の長袖の服と瞬間接着材を必ず用意します。
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