★★ 解説 ★★
その両方から糞(ふん)を拾って顕微鏡で植物の組織を調べると、ヒシの実の外側にある硬い殻(から)が細かくなって出てくるので、間違いありません。ヒシの実を食べた時の糞(ふん)の色も、濃い紫色をしているので一目でそれと分かるほどです。では、どのようにしてあの硬い実を食べるのでしょうか。
オオヒシクイは長い首を上手に使って、首が届く範囲で水の底に沈んでいる実を拾い上げます。水面に浮いているものは芽が出た後の実で、中身がないので食べません。それを嘴(くちばし)にはさみ、コロコロと回転させながら棘(とげ)を折って取り除きます。棘(とげ)を取り去った後は丸ごと飲み込んでしまいます。「そのう」という消化管を経て「砂嚢(さのう)」に送り込まれます。「砂嚢(さのう)」とは、丈夫な筋肉でできた胃袋のことで、「筋胃(きんい)」とも言います。焼き鳥屋さんで「スナギモ(砂肝)」と呼ばれる、口当たりのコリコリした串焼きがありますが、それが「砂嚢(さのう)」です。オオヒシクイには歯がない代わりに、この「砂嚢(さのう)」で飲み込んだ食べ物をすりつぶすのです。そのために砂や小石が必要で、食べ物を飲み込む時あるいはその前後に砂や小石も一緒に取り入れます。水鳥を飼う場合、餌の他に必ず「泥餌(どろえ)」といって砂や小石を与えないと、消化不良をおこして死んでしまうので注意が必要です。少し大き目の小石でも「砂嚢(さのう)」の中で十日ほどもまれると形がなくなってしまうそうです。最終的には糞(ふん)と共に体の外に出されます。
|