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ホーム > 30. オオヒシクイは、ヒナを幼稚園のように集団で面倒(めんどう)みるというのは本当ですか。
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 いまのところ、オオヒシクイではそのような例は確認されていません。集団で面倒(めんどう)みるのは、開けたツンドラで繁殖(はんしょく)するヒシクイやマガンです。

群れ

★★ 解説 ★★
 日本に飛来するガン類の中で、集団でヒナの面倒を見ることが明らかなのは、マガン・ヒシクイの二種です。ハクガン・コクガンは「コロニー」といって、狭い範囲にたくさんのペアが集まって巣を構え、ヒナが誕生した後も、そのまま繁殖(はんしょく)した家族でまとまります。マガンとヒシクイはそれぞれのペアがお互いに離れて巣をつくり、孵化した後に家族が合流するので、ハクガンやコクガンの場合とは事情が異なっています。マガンとヒシクイは羽が茶褐色をしていて、巣の上にうずくまっていると、地面の色に紛れてほとんど目立ちません。ハクガンはもとから色が白くてよく目立ち、コクガンは体がこれらのガンの中では最も小さく、自分自身や巣を敵から守るために、共同で防衛にあたります。そのために、繁殖(はんしょく)の最初の段階から集団になるのです。
 では、卵を抱く間は別々だったマガン・ヒシクイは、なぜ孵化後に集まるのでしょうか。それは、ヒナの世話をみんなで分担し、一羽あたりの仕事量を減らすことで、産卵や抱卵中に失われた体力を少しでも早く回復し、秋の渡りに備えるためです。特にメスの体重の減少は著しく、増してやこの時期には「換羽」といってガン類にとって非常に危険でストレスの多い時期を迎えなければならないので、極めて有効な手段と考えられます。
 例えば、見張りをする親が二羽しかいない一組の家族では、オスかメスのどちらかが常に警戒しなければなりません。見張りの引継ぎの時には、両方が首をたてて交代の合図をだしますから、このときは両方とも採食できません。ところが、幾つかの家族が集まり、そのうちのどれかの成鳥が見張り役をつとめれば、他は採食に集中できます。群れに含まれるガンの数が50羽ぐらいに増えると、見張りをするガンの割合は20%を割り、100羽では15%前後に減ります。150羽では10%近くまで下がりますが、逆にそれ以上に増えても、警戒する個体の割合は変わりません。むしろ一つの群れのガンが多いと、食べる草をめぐって隣同士でもめごとが起きます。ある程度落ち着いて採食するには、食草の豊富な場所の面積に見合った数以下に収めなければなりません。マガンの場合だいたい3〜4家族の20羽前後、ヒシクイの場合には6〜7家族の40羽前後の群れが適当のようです。ヒシクイでは200羽程の大きな繁殖(はんしょく)家族群も確認されたことがりますが、これは希なケースだと思います。
 1999年の調査では八つのオオヒシクイの繁殖家族(はんしょくかぞく)を確認しましたが、いずれも単独でした。最上流部で見たヒナの小さい家族も、中流から本流で見たある程度ヒナが成長した家族も同じでした。このことは、オオヒシクイがタイガを流れる川で繁殖期(はんしょくき)を過ごすことに関係していると考えられます。川の上が木々の枝や葉で覆われ、上空からは見通しにくい環境です。同じようにタイガで繁殖(はんしょく)するカリガネも、繁殖家族(はんしょくかぞく)は集団をつくらないといわれています。
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