巣から少し離れたところに立って一日番をします。メスが巣を離れて採食に出るときはそれに付き添って自分も採食します。メスは卵を抱きながらねる時もありますが、オスは24時間ほとんど立ったままです。
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★★ 解説 ★★
ガン類の繁殖(はんしょく)に関しては、メスの行動が注目されがちです。実際に卵を産み、温めるのがメスの役目で、直接の繁殖(はんしょく)をになうほうに目が向くのは当然です。しかし、繁殖(はんしょく)の成功・失敗のカギを握るのは、むしろオスの支えによるところが大きいと思います。
まず、条件の良い営巣地を確保しなければなりません。雪解けが早く、外敵の目につきにくい安全な場所で、食べる草の豊富なところを捜します。メスが卵を抱いている間は、常に緊張して警戒(けいかい)にあたります。卵が孵(かえ)った後は、いつ敵の目を掻(か)い潜(くぐ)って安全な川や湖にヒナを導いていったらよいのか、判断するのもオスの役目です。ヒナとメスが食べることに夢中になっても、メスが見張り番を引き受けてくれない限り、オスは我慢して警戒(けいかい)を続けます。もし陸や空から敵が現れると、自分だけは家族と反対の方向へ移動して、敵の目をヒナからそらそうとします。この間ヒナは川岸の茂みや窪(くぼ)みに頭を突っ込んでじっと身を隠しています。敵が去ると、オスはヒナたちに安全を知らせ、再び家族が一つにまとまります。
話が抱卵(ほうらん)期間中だけでなくその前後にも及びましたが、オスの働きはその年の繁殖(はんしょく)の成否に大きく影響します。あまり表に現れないので評価されにくいのかも知れませんが、オスはメスとヒナをしっかりと陰で支えているのです。
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