一言で説明すると、コハクチョウをそのまま一回り小さくして、体の色を茶色に塗りかえたような大型の水鳥で、地方によっては「クロハクチョウ」という名前で呼んでいました。オスメス共に同じ羽の色をしています。外形や生活の面からは、ガンの仲間であるオオヒシクイもハクチョウも極端(きょくたん)な差はありません。 オオヒシクイに関する具体的な数字を挙げると、嘴(くちばし)から尾羽の先までの全長は89〜98cm、翼(つばさ)を広げたときの長さはおおよそ1.8〜2m、体重はオスで5.1Kg、メスで4.6Kgほどです。嘴(くちばし)は大部分が黒色ですが、先端部にオレンジ色の部分があります。また脚(あし)もオレンジ色で、発達した水かきが前三本の指の間についています。長い首と丈夫な嘴、水かきのついた短めの脚(あし)が特徴の水鳥です。
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★★ 解説 ★★
分類学的には、オオヒシクイは「ガン」の一種です。ガンには世界で15の種類があります。体の羽に黒い部分の目立つコクガンの仲間が5種、それとは別に、羽の色が茶色か白っぽいマガンの仲間が10種あり、オオヒシクイはマガンの仲間です。
ガンの仲間はハクチョウ類(7種)やカモ類(約130種)と共に、「カモ科」という大きなグループに属しています。ガン類とハクチョウの主な違いは次の通りです。
(1)ハクチョウの方が背骨(脊柱)の数が多い
(2)ハクチョウは飛び立つのに助走がいるが、ガンは水面から直接飛び立てる
(3)ハクチョウは交尾の前にオスメスが向かい合ってダンスをするが、ガンは横に並んでおなじ方を見る
(4)ハクチョウはオスも巣づくりを手伝うが、ガンではメスだけが行う
(5)ハクチョウはヒナを背中に乗せて泳ぐことがあるが、ガンはしない
(6)抱卵(ほうらん)期間中、ハクチョウのメスが食物を食べに巣を離れる時、オスは巣の上で留守番をするが、ガンではオスメスそろって巣を離れる
一方、カモの仲間は
(1)オスメスで異なる羽の色をもつ
(2)結婚の相手を毎年かえる
などの点でガン・ハクチョウとは異なります。
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